1999年6月 産経新聞より

寺島進の映画感染

ARBの”PV”撮影現場で

 昨年復活したロックバンド、ARBの新曲「反逆のブルースを歌え」のPV(プロモーションビデオ)の撮影に参加した。
 ARBのヴォーカリスト、石橋凌さんとは『ア・ホーマンス』(松田優作監督)、『キッズ・リターン』(北野武監督)、『チ・ン・ピ・ラ』(青山真治監督)と共演を重ね、公私ともにお付き合いをさせてもらっている。先日、東京・下北沢にある行きつけのジャズバーで一人で飲んでいると、偶然石橋さんが今回のPVのスタッフを連れてお店に現れた。どこかでにおいをかぎつけたのか、「テラちゃん、やってくれるかなぁ?」と来る前にウワサしてたらしい。これも何かの縁だと思い、引き受けさせてもらった。
 物語は、ARBのメンバー4人がタクシーの運転手役という設定だった。仕事中、犯罪者、ストレスがたまりそうな客などが乗ってきて、彼らの心の葛藤(かっとう)が歌詞の内容とオーバーラップして描かれる。
 オレの役は非常に急いでいる客。西新宿の高層ビル街の撮影現場で、タクシーの運転手役を演じるARBのギタリスト、内藤幸也さんと再会する。昨年4月にARBのライヴに行ったとき以来だ。またカメラマンは、今年1月に出演した映画『報復2』(鈴木浩介監督)でもご一緒した金谷宏二さん。仕事であったことのある人が現場にいると安心するし、うれしいものだ。撮影中は天気もよかったし、気持ちも盛り上がってわれを忘れて過度な芝居になってしまった。
 けん引車の荷台にカメラが置かれ、それでタクシーを引っ張りながら撮影は行われた。内藤さんはクールに客をあしらうことになっているが、オレがあまりにもクサイ芝居をするので噴き出してしまう場面もあった。NG連発でもさすがはミュージシャン!内藤さんは演技は初の体験だったが、リズムと間(ま)、そしてカンがいいいのだろう、ピュアで自然な芝居を目の当たりにすることができた。とても刺激的だった。
 彼らの音楽を聴いていると、心の中で映像を回想しているような気がする。映画には音楽は欠かせないものだし、芝居をしている最中に自分の中で音が流れていると感じるときもある。
 「映画と音楽は共通している」。
そんなことを思い浮かべながら、新鮮な経験をさせてもらったPVの撮影現場だった。

(映画俳優)