ARB

1990.10.27 LAST LIVE

さらば相棒、さらばARB! 国立代々木競技場

全3時間半。
未練も涙もなく、
それは潔い終幕だった。
 約1年4ヶ月ぶり、2回目の国立代々木競技場でのライヴが彼らのラスト・ステージになると、誰が予想しただろうか。
しかし、直視しなければならない現実は、今、目の前にある。
 会場をぎっしりと埋めたARBキッズが見守る中、デビュー曲「野良犬」のBGMがだんだんと大きくなり、ほぼ定刻に最後のライヴはスタートした。
 彼らとともに全国を回ってきた、4人の姿がシンプルに一筆書き風に描かれた幕の向こうから、「ハロー!」と温かみのこもったシャウトが聞こえてきた。
「狂いたくても狂えない、笑いたくても笑えない、東京の、日本の全てのロックンロール・キッズに贈ります。『BOYS & GIRLS』!」
 凌の言葉を受けてつなぐように、タイトなビートがはじけ、ゆっくりと上がる幕の向こうから、メンバーの姿が現れた。ARBのソウル・ソングのひとつ「BOYS & GIRLS」から、彼らは快調に飛ばしていく。心地よい疾走感。
「日比谷の野音で今日のことを伝えて以来、ショックを受けた人も複雑な人も、いろいろいると思います。いろんな思い出がそれぞれにあると思いますが、どうぞ最後まで楽しんでいってください」
 会場を埋めたファンも、もう心の整理はついているのだろう、凌の挨拶にも、ひどい抗議は起こらない。今さらやめるなと叫ぶより、この最後のステージを思う存分楽しもう、そんな空気の方が強い。
 凌の挨拶をひとつの転機に、この日初めてのバラード「AFTER'45」に歓声が起こる。そして、余裕の感じられるベテランらしいプレイで、どんどんステージは進んでいく。なごやかに明るく手拍子も起こった。「ラ・ラの女」を経て、ゲスト・コーナー。
 このラスト・ツアーでは、全ヶ所ARBの仲間のミュージシャンがゲストで参加し、ARBナンバーを披露してきた。代々木での最初のゲストは花田裕之。そして、RCのチャボ。花田は「STANDING ON THE STREET」を、チャボは「OH! PLEASE」をARBとともに楽しんだ。
 2部構成のステージ、1部は「OWE MY OWN」で幕を降ろした。
2部。1部のスーツ姿から、ラフなジーンズとジャンパーに着替えた凌が、まずひとりで出てくる。サポートの野島健太郎のピアノにのせて「HEAVY DAYS」。白浜久と浅田猛を呼び入れて、ふたりのアコースティック・ギターと共に「ダン・ダン・ダン」。そして一番つき合いの長い相棒、キースを呼ぶ。会場からも歓声が起こる。曲は「Just a 16」。熱い熱いバラードだが、この日は特に熱かった。ラストに向かって、これでもかこれでもかと壮絶なほど、凌はシャウトに思いを込める。聴いているほうも、思わず体に力が入ってしまった。
 2部のゲスト・コーナーは、氷室京介とストラングラーズのJ.J.BURNEL。氷室スタイルの「TOKYO CITYは風だらけ」、そしてJ.J風の「ユニオン・ロッカー」と「ハ・ガ・ク・レ」。J.Jは特別に2曲だ。ARBフリークには今さらいうまでもないと思うが、J.Jはキースの友人で、以前にARBのベースに欠員が出た時、わざわざイギリスからやって来てサポート・メンバーとして活躍してくれた。「ハ・ガ・ク・レ」は、その時から彼の大好きなナンバーだった。今回解散の報を聞いて、またはるばるイギリスからかけつけてくれた、すてきなフレンド・シップの持ち主なのだ。
 ゲスト・コーナーが終わり、ワーク・ソングの数々が歌い続けられ、ラストは「喝!」。風が吹き荒れるSEが流れ、気分を高める。気迫のこもった歌声、そしてエンディングと共に、ステージ前面で高く水が吹き上がり、凌に降り注ぐ。ずぶぬれのまま手を高く掲げる凌。前回の代々木でも、凌が水に飛び込むシーンがあったっけ。ドラマティックな演出だ。
 ステージは当然のようにアンコールへ。アカペラで始まり、間に凌の好きなトム・ウェイツのナンバーをはさんだ「SOUL TO SOUL」。そして3人のメンバーが入り、一言ずつ挨拶する。
「どうもありがとう。いつまでもARBを忘れないでくれ」(白浜)
「どうもありがとうございました」(浅田)
「どうもありがとう。さよならっ!」(キース)
 各地でこの挨拶を繰り返してきた彼らだが、キースの”さよならっ”はさすがにこの日、一番力がこもっていた。
 2度目のアンコール、「SPEED OF LOVE」に続いて凌がいう。「明日から、別々の道を歩いていくけど気持ちはこの歌のままです。『魂こがして』」
 ステージ奥に赤で書かれた大きな魂という文字が浮かび上がる中、本当に最後の彼らのソウル・ソングが流れる。そこには力強さこそあれ、湿っぽい気分は一切なかった。彼らはきちっと堂々と、プレイしきり、歌いきった。
 彼らが去ったステージにアンコールの嵐。手拍子と声では足らず、みんながドンドンと床を鳴らし始める。
 メンバーは再び姿を見せた。
「どうも、全てのロックンロール・キッズ、全てのARBキッズ、どうも15年間ありがとうございました」
 凌が言い終わるや、かんぱつを入れずにギターが鳴り響く。「明日へのBOOGIE」だ。「魂こがして」で、しんみり終わるのではなく、未来への希望を持たせようと、明るく前向きな曲でのラスト。明るくなった客席に、ノリのいいブギが充満する。「どうもありがとう、バイバイ」という、軽いさよならの言葉を残して、彼らの歴史は幕を閉じた。
 全3時間半。未練も涙もなく、それは潔い終幕だった。男気のある骨っぽいバンドとして彼らの姿は、代々木に集まった全ての人の胸に刻みこまれただろう。

レポート/角野恵津子

ARB
魂、鳴りやまず
1990.10.27
国立代々木競技場
【1部】
 1.BOYS & GIRLS
 2.イカレちまったぜ!!
 3.URBAN FREE WAY
 4.トラブルド・キッズ
 5.BLACK EYES
 6.ROCK THE GUERRILLA
 7.灰色の水曜日
 8.AFTER'45
 9.MURDER GAME
10.SYMPATHY
11.SCRAMBLE WORLD
12.ラ・ラの女
13.STANDING ON THE STREET(ゲスト・花田裕之)
14.OH! PLEASE(ゲスト・仲井戸麗市
15.Daddy's shoes
16.Deep INside〜Whisky & Vodka
17.OWE MY  OWN
【2部】
 1.HEAVY DAYS
 2.ダン・ダン・ダン
 3.Just a 16
 4.NO EASY ROAD
 5.TOKYO CITYは風だらけ(ゲスト・氷室京介)
 6.ユニオン・ロッカー(ゲスト・J.J.BURNEL)
 7.ハ・ガ・ク・レ(ゲスト・J.J.BURNEL)
 8.HOLIDAY
 9.SYSTEM IN SYSTEM
10.AUTOMATIC MAN GOES
11.一人ぼっちの世界
12.Rock Over Japan
13.War Is Over!
14.Do IT! BOY
15.喝!
―――ENCORE―――
 1.SOUL TO SOUL
 2.GOLDEN TIME
 3.R&R AIR MAIL
 
 1.SPEED OF LOVE
 2.魂こがして

 1.明日へのBOOGIE