1990年アリーナ37℃



ARB

9・23新宿パワーステーション

これが最後のライヴハウス

レポート/角野恵津子

飛び散る汗に全ての思いが込められていた

 ライブ・ハウス育ちの彼らを、もう一度ライブ・ハウスで見たい。
多分ファンの誰もが願っていただろう夢が、9月23日、新宿・パワーステーションで実現した。ロフトじゃないのが少し残念だったが、彼らの魂を間近に感じられる最後のチャンスだ。これは、うれしいなんてもんじゃない。しかも、兄弟バンドといってもいいパーソンズと、アニキ分の柴山俊之とのジョイント。もう、会場のボルテージはあがりっぱなしだった。
「今日の出演バンドはちょっと年齢高いけど、ティーン・エイジ・ロックには負けません」
と気の利いたコメントがイカしてたパーソンズが、トップで盛り上げる。おなじみのナンバーを次々に飛ばしたあと、
「この曲をあとから出てくる凌とキースと、いろんな人に捧げます」
といって歌われた「DEAR FRIENDS」が、しみじみと心にしみた。
 柴山俊之は、ロック・バンドを従えてカッコいい大人のロックを展開。ストーンズ以上に不良大人。スケベさがこんなにカッコいいロック・ヴォーカリストは、ちょっといないと再確認。柴山さんは、絶対にライヴやるべきだ。
 そしてARBコールに迎えられて、いよいよARBの登場。最初は白浜久と凌のふたりだけで、「AFTER'45」。会場をぎっしり埋めたARBフリークが、凌と一緒に歌い出す。ろうろうとして、しかもロックのとんがりをもった凌のヴォーカルが、じわじわと会場に流れる。この歌声がもうすぐ聴けなくなるなんて、本当に寂しい。
 次に浅田猛を呼び入れて「抵抗の詩」。そしてキースの登場だ。大きな拍手が起こる。ひたすらステージの奥で実直にドラムを叩き続けてきたキース。その存在は地味なようで、しっかりファンの心に刻み込まれ、この拍手が起こったのだ。
「DO IT! BOY」「明日へのBOOGIE」「OWE MY OWN」と曲は続く。凌は時にタンバリンを手に、軽くリズムを取りながら歌う。湿っぽい雰囲気は一切なく、ステージの上のメンバーも、下の客も、ともにただ無心に楽しんでいる。
  ドラマティックな「ファクトリー」で盛り上がり、ステージは終盤へ。
「どうもありがとう。10月27日、代々木でやります。それ以降、気持ちはこの歌のままです」
凌の言葉に続けて歌われたのは、そう、「魂こがして」だ。
ARBのソウル・ソング。キースのドラムにも、この魂のひと文字が書かれている。ていねいに、熱く、思いを込めて歌う凌。この歌も、あと何回歌うのか。残りが少なくなってきた。歌い終わった凌から、汗が飛び散る。それが見えるのもライヴ・ハウスならでは。やはりこのステージは貴重だった。「SPEED OF LOVE」「喝!」でアンコールにこたえる4人、客達の未練、寂しさ、感慨・・・・・・・そんなものが入り交じって、独特の異様な空間が生まれるかと思っていたが、そんな思いはみんながきっちり胸の奥にしまいこみ、とにかく楽しもうとしたからか、まるでまたすぐにどこかでそのステージを見られるんじゃないかという気持ちにさせるほど、いつものライヴだった。でも、そんなライヴでよかったのだと思う。未練の目で見つめられたら、すでに全てを決めたメンバーは、辛い気持ちを背負わなければならなかっただろう。
 彼らの最後のライヴ・ハウスでのステージは、快い汗と興奮を残していつものように幕を下ろした。