1989年アリーナ37

ARB

胸の中の怒りと悲しみがこれを生んだ

初の海外レコーディングによる新作
〔SYMPATHY〕の静かなる衝撃を聞け!

 ARBの通産15枚目のアルバム〔SYMPATHY〕は、初の海外レコーディングで作られた。
場所はオーストラリア。地元のバンド、イン・エクセスのスタジオ、ライノセロス・スタジオで、やはり現地のミュージシャンの参加を得て、レコーディングは約3週間で無事終了した。
 今更海外レコーディングといっても、別に珍しいことでも何でもない。しかし今回の海外で、彼らは精神的にも大きな体験をし、それはおのずとアルバムにも現れることになった。海外から日本を見ることで、新たに自分達のスタンスを確認したARBの、変わらないロック魂を、このアルバムで感じとってほしい。
―――今回オーストラリアを選んだのは。
白浜  英米って商業音楽丸見えっていうか、そういうもんがもうできちゃってるでしょ。だから、音楽を純粋に目指すとすれば、そういう大都市に行くより、オーストラリアのバンドの音ってけっこういいんだよ。だからそういうとこで、のんびりとメンバー同士や現地の人とコミュニケーションとりながらやれたらいいなと。
石橋  ARBはメッセージ・バンドだとか社会派バンドだとか堅苦しいバンドだとかっていうイメージがあって、今までいろいろそれを否定してきたりしたんだけど、もうそういうことにとらわれることから、自分達自身が抜けて、もうちょっとレンジ広げて、グローバルに今後やっていきたいんで、そのための精神的な開放と、いい音をとりたいっていうことで、今回はオーストラリアにしようってことになったの。
白浜  で、初めての海外レコーディングで、いろんなことあるのいやだから、アレンジのデータ作りとか、できることは日本でやってたのね。で、楽しくやろうと思ったら、とんでもなかったのね。この人(凌)なんか、もうカッカ、カッカしちゃってね(笑)。
石橋  街を歩いてるとね、日に日に視線が他の人を見るのとは違うわけよ。
白浜  びっくりしたんだけど、親日家はほとんどいなかった。
石橋  バーとか行って、カウンターに一人で座るとさ、露骨にイエローとかいいながら席を移るヤツもいたし、するとこっちも何でだよってムキになるよね。で、何故かっていうと、やっぱりハワイと同じように、土地を買っていくって。
―――そんな日本人に見られてイライラして?
石橋  だって、オレ達は何もしてないもん(笑)。
白浜  うん。土地買うような金ないしさ。でも、日本人がオーストラリア人をああしちゃったんだねっていう話はしてたの。で、オレらが尻拭いするか、誰かがするしかないとこまできてるってね。
石橋  だから、オレ達は本当にひどいとこから来たんだなっていう、それが実感だったよね。それが明快に歌に出て、明らかにイライラしてんですよ。で、自分が書いた詞を、ここまで語気強く歌わなくてもいいんじゃないと思っててもさ、どうしてもそういう歌い方になるのよ。
―――それって「GOLDEN TIME」(土地の買占めや、株の相場に一喜一憂する、東京という街を裸の王様と批判した歌)の歌入れの時かな。
石橋  そうそう。ホント、竹刀なんか持って歌おうかと思ったもん。で、その辺のもんぶっ壊してさ、弁償はいくらかかってもしょうがない。レコード会社が払うだろうって(笑)。
白浜  場所的には海も空もメチャクチャきれいなとこでさ。だから、そんなきれいなとこでなんでって、なおさら悲しかった。
石橋  ただ、スタッフとかミュージシャンは、みんなすごいよかったよ。
白浜  うん。日本に対して、あこがれも持ってたしね。楽しかった。
―――次にアルバムの内容なんだけど、シングルにもなった「MURDER GAME」は、例の宮崎事件をもとに作った歌?
石橋  そう。ここで一番言いたかったのは、これを聴いた人たちの間で、この曲をテーマにして会話が始まればいいなということ。それが大事。だって、直接的ではないかもしんないけど、マシンやファミコンしか相手にしてないから、人間とのコミュニケーションが欠損して、こういう事件が起きちゃうんでしょう。だから宮崎がやったことは、あいつだけの責任じゃなくて親だけの責任でもなくて、社会全部が、その事件の原因の一つの要素なわけだから。で、これが一過性のものだったらいいけど、ずっと続いていくだろうしね。だから歌う。何を言われようが、これはオレ達の意見として言うよって。でもね、この曲を作った時は、まだ宮崎はつかまってなくて、本当に偶然だけど、この曲のミックス・ダウンする日に捕まったのね。
―――レコーディングがすべて終わった時に感じたことは?
石橋  まあ、いろんな問題はあったけど、音もいい音取れたし、開放感ていうテーマも達成できたし、今のメンバーでコアな部分は、今回でできたかなと思うのね。
インタビュアー/角野恵津子
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